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2008.06.01

【映評】『シチズン・ドッグ』/タイ式シネマ・パラダイス

Movie08  2004年/タイ/監督:ウィシット・サーサナティアン/出演:マハーサムット・プンヤラック、セーントーン・ゲートウートーン/1時間39分

◎この映画を含む【タイ式シネマ・パラダイス】は、7月11日までシネマート六本木で開催中。

オフィシャルサイト http://www.cinemart.co.jp/thaishiki/

この特集上映に関する過去ログはここ

一言でタイ映画といっても様々だ。ニミブットのような芸術的なものもあれば、「!」を数え切れないほど連ねたぶっ飛びのアクション映画もあるし、素敵なおネエさまたちがハッピーな気分をくれるゲイムービーもある。最近は、ぶっ飛びアクション系のほうが目立つような気がするのだが、この映画はそれとは違う方向にぶっ飛んだ。

この映画はなんとも不思議な映画だ。現実離れした色合いとレトロな調度のなかで、ちょっとヌケてて気弱そうな青年が独自の価値観というか信仰に近いものを持った女の子に恋をするのである。青年の名前はポッド。ポッドは、転職先で出会った彼女・ジンの近くにいたいために職を変える。そのくらい彼女にメロメロだ。ジンは、少女時代に空から降ってきた白い本に執着し、他のことは目に入らない。本の中身は彼女の知らない言葉で、これは天からの啓示だとピュアなジンは信じている。そして、同じ本を持っている(と思われる)外国人をなぜだか環境保護の活動家だと信じ込んで、自ら環境保護活動にのめり込んでしまう。そんなジンを、気弱なポッドは切ない思いを抱いてただ見ている。一緒に活動しようとはしない。なんでだよ!?

ああ、もうじれったい。じれったいと思うし、切なくもあるのだが、でも、どこかこの映画の切なさは妙だ。おそらくそれは、総天然色という摩訶不思議な色彩世界のなせるマジックなのだろう。この色使い、昔、見たことがある……そうだ、タイ映画が面白くなっていると噂になり始めた頃に見た『怪盗ブラック・タイガー』だ……と思ったら、同じ監督だった(最初に確認しとけって?)。ただ、完全に絵空事のタイ式ウエスタンだったブラック・タイガー(って海老じゃないか。今頃気付いた)に比べ、環境保護ネタを入り込ませることでこの異世界をこちらの現実世界に引き寄せようとしているようだ。そうやって架空のバンコクの街に作り出したペットボトルの山がまた美しかったりもするわけで、つまり総天然色の魔法というものは、俗物をファンタジーに変えてしまう。切なさも気弱さも全てファンタジーなのだ。

「バンコクに行くと、シッポが生えてくる」

これは、ポッドが田舎から出てくるときに祖母に言われた言葉だ。それがいいことなのか悪いことなのかわからない。なぜシッポなのかもわからない。このシッポは、ある種の純粋さ、もしくは純粋さゆえの盲目と引き換えに手に入れるものではないかと思う。たいていの場合、純粋さは美化されているけれど、純粋さの衣を着た愚鈍もある。愚鈍から脱して見えるものが見えるようになったときにシッポが生えるのかなぁ、シッポが生えて幸せになれるのかなぁ、と映画を見終わって思ったりもするのだが、でも、そればかりではないような気もする。うーん、よくわからない。でも、答えをきっちり出せないのもファンタジーの醍醐味かもしれない。

参考※『怪盗ブラック・タイガー』2002年7月日本公開

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