◆『台北カフェ・ストーリー』シアオ・ヤーチュアン監督インタビュー(第23回東京国際映画祭)

絶妙なコントラスト! 姉と妹、キャスティングの裏側をきく

(取材日:2010年10月27日 東京国際映画祭にて/取材・文・写真:Qnico MIC INAMI)

Imgp0326_6 私が初めて台北を訪ねたのは今から20年ほど前になる。当時は、コーヒーが飲ねる店がそんなに多くなく、西門町を歩いても目につくのはパパイヤミルク(木瓜牛乳)やジュースのスタンドだった。それが、今や街のいたるところにカフェがある。チェーン店でも日本でもおなじみのものから地元資本のもの、スイーツにこだわった個人経営店などさまざまだ。

『台北カフェ・ストーリー』の主人公・ドゥアル(グイ・ルンメイ)は、叔母の国外移住をきっかけにカフェ経営を始める。静かな洒落た店で自慢の手作りケーキとカフェ・ラテがウリになるはずだった。ところが、友人たちからの開店祝はガラクタとしか言いようのない品々。どうしたものか困り果てていたところ、妹のチャンアル(リン・チェンシー)が物々交換カフェのアイデアを思いつく。
 物語のかなりのシーンがドゥアル・カフェの中で進行していく。洒落た店が散在する台北市民生社区の街路も出てくるが、室内の印象が強い。それだけに、メインとなる姉妹のキャラクター、キャスティングが作品の出来不出来を左右する。

「グイ・ルンメイで撮ることは最初に決めていて、それで脚本を書いたんだ。ただ、そのときは姉妹のうち彼女がどちらになるか決まっていなかった」

 東京国際映画祭(2010年)での上映時、来日していた監督に尋ねると、まず、その言葉が返ってきた。テレビドラマが幅をきかせていたゼロ年代前半の台湾で映画中心の活動でブレることのなかったルンメイは、映画人たちにとってマドンナと言える存在だ。それは制作者にとってだけではない。

「妹役のリン・チェンシーには、姉役が誰か告げず、いきなりルンメイに会わせたんだ。すごく驚いていた。ずっとファンだったらしい。彼女には姉がいないせいか、撮影中はルンメイのことを実の姉のように慕ってくっついてまわっていたんだよ」

 その監督の証言から、正反対のようでありながら、きわめて密接な姉妹の関係が舞台裏も反映していたことがわかるだろう。
 姉妹は、そのコントラストが見事だ。色で譬えれば、あまい暖色系の姉とクールな寒色系の妹。姉であるドゥアルは会社勤めの経験もあり、落ち着いて現実的に物事を進めようとする。たとえば、花を買いに行く途中、クルマの接触事故を起こした相手が生花業者だとわかると、修理費代わりに花を手に入れる現実的なしたたかさを持っている。対する妹のチャンアルは、まだ若く、定職についたことがなく、ふわふわしていて落ち着きに欠けるのだが、自由な発想を持っていて、ゆえに物々交換を店の特色にすることを思いつく。世間知らずな分、物々交換に“わらしべ長者”的夢を抱いているのが難点だが。
 ドゥアルとチャンアルは、しばしば口やかましい母親に説教される。足裏マッサージの施術中だったり、夜食を食べながらだったり、タクシーの中であったりシチュエーションは様々だが、姉妹は聞いているのかいないのか、その場は母親の独演会と化す。

「最初は知り合いの広告代理店の人に母親役を頼むつもりだった。だが、拒否された。彼女が『そんなに私みたいなのがいいのなら、そっくりな人を紹介するわ』ということで紹介されたのが、あのユーリン・マなんだが、初めて会ったときから映画の中と同じ調子でね」

 と明かす監督。姉妹のパワフルな母親は、実在したということになろうか。母親の言うことはいちいち当を得ていて、同感同感と心の中で頷きながら、その物言いの直截さと周囲を巻き込むパワフルさに笑ってしまう人もいるのでは?
 しかし、いくら母親がユニークだからと言って、これは母娘の映画ではない。

「僕は、心の中の価値に関する映画を撮ろうと思った」

 途中、実際に一般の人たちを対象にした街頭インタビューを織り込みながら、物と心の関係を探っていく。実際、価値観は人それぞれだ。
 ドゥアル・カフェの物々交換の物差しは金銭的なコストではない。まったく主観的なものだ。異なる主観によって決められた価値がうまく折り合ったところで交渉は成立する。そんな日々のなかで、少しずつふたりは変わっていく。そして、新しい夢をみつけ動き出す。

 この映画は、2010年の5月に台湾で公開され7週間に及ぶロングランヒットになった。

「十数回も映画館に足を運んでくれたファンがいるんだ。彼は、グイ・ルンメイが好きだったが、いつの間にかリン・チェンシーに転んでいたらしい(笑)」

 と愉快そうに話す監督。それにしても、なぜカフェの映画なのだろう?

「僕自身の夢のひとつにカフェがあったから。劇中に出てくるカフェの工事のシーンは、実際に建てている最中に撮影したんだ。お菓子はプロデューサーが作ったんだよ」

 撮影に使われたカフェは、実際にドゥアル・カフェ(朶兒珈琲館 Daughter's Cafe)として営業している(店内撮影禁止)。じつは、グイ・ルンメイのデビュー作『藍色夏恋』や金城武主演の香港映画『ターンレフト・タンライト』の撮影が行われたのも同じエリアだ。台北観光の折には足を延ばしてみるのもいいかもしれない。

『台北カフェ・ストーリー』~ものの価値は人の心が決める~
☆4/14~シネマート六本木よりロードショー☆
オフィシャルサイト http://www.taipeicafe.net/

原題:第三十六個故事
2010年・台湾映画/82分
監督:シアオ・ヤーチュアン(蕭雅全)
出演:グイ・ルンメイ(桂綸鎂)、リン・チェンシー(林辰唏)、チャン・ハン(張翰)、中孝介、ユーリン・マ(馬玉)
音楽:サマー・レイ(雷光夏)第47回金馬奬・最優秀オリジナル歌曲賞「第36個故事」

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